周囲も見とれるほどの熱気だった。全体練習も終わりに近づき、打撃ケージでは若手がフリー打撃を始めたころ。松中が待ちかまえていたように川崎に声をかけた。「おい、ムネ。そろそろやるぞ」「ハイ!」。2人の緊急特訓が始まった。
「向こうから言ってきたので。それなら、ボクが打てない時にやる練習を教えよう、と」。松中の手本に続いて、ノックバットを手にした川崎がホーム付近から外野へ向かって連続でノック。最初は空振り、へなちょこな打球ばかりが目についたものの、およそ30分後には「3連発」フィニッシュ。笑顔のガッツポーズまで飛び出した。
ここ10試合で33打数5安打、打率・152。迷路をさまよう2番打者の再生は、結果的に自らを助けることにもなる。白熱の打点王争いでは、トップの松中にズレータが10差と急接近。川崎が塁に出れば、突き放すチャンスも増大する。
もちろん、松中のチーム至上主義にも狂いはない。2年連続の40発に王手をかけて5試合連続ノーアーチながら、再爆発の予感は十分だ。「そろそろ? いや、チームが勝てば。明日は杉内を援護してやらないと」。チームとともに、後輩左腕も20勝への正念場。主砲が差し出す“愛の手”ですべてをハッピーエンドに導くつもりだ。
「ノックをやるとヘッドを利かせて打つことができる。力の伝わる打ち方じゃなかったのが、最後はスタンドに届いたでしょ? 明日の2番打者の活躍が楽しみ」。レギュラーシーズンも残り23試合。後輩を助け、自分も助けて、独走のゴールインを完成させる。
【西日本スポーツ】
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